2013年9月9日月曜日

ヒョウと人々~野生動物と暮らす in Kenya~

 ヒョウと人々~野生動物と暮らす in Kenya~というFacebookページを作りましたので、本ブログとともに、見ていただけたらうれしいです。

 アドレス:https://www.facebook.com/LeopardConservationInKenya


よろしくお願いします!

ヒツジが。

 昨日は悲しいことがありました。ヒョウを捕まえるためにおとり用に3頭にヒツジを飼っているのですが、そのうち1頭が死んでしまいました。

 先月、住宅で犬がヒョウに襲われたため、罠を仕掛けました。その罠におとり用のヒツジも貸し出しました。場所が少し離れているため1週間から10日に1度様子を見に行っていました。他の日は、貸出先の家で餌や水をもらい、とてもよくしてもらっていました。お家の方からもとてもいいヒツジだから気に入ってしまったと電話をもらうくらいでした。

 ところが、昨日急に電話がきて、「ごめんね、ヒツジが・・・」と。昼間に草を食べていたヒツジが、つないであったロープと木でぐるぐる巻きになってしまっていたそう。家の人が見に行った時には、もう息がなかったと。。。

 言葉もありません。

2013年7月24日水曜日

ヒョウが住宅街に?!

 ナイロビは、6月後半から8月にかけて寒く、曇った天気が続きます。そうすると、ヒョウも昼間森の中や岩の上で寝ていると寒いのであちこちを歩き回っているため、目撃件数が多くなります。今までの調査の経験から言っても、ヒョウが罠にかかるのもこの時期が多いです。写真は先週見かけたヒョウ。久しぶりに天気がよかったので、木の上でひなたぼっこ。



6月後半には、ナイロビ国立公園北側の、高級住宅街にヒョウが出現しました。夜間、セキュリティのために庭に放し飼いにする犬を襲ったものでした。ヒョウはとても用心深いので急に来てその日に襲ったりすることはまずありません。1週間くらい毎晩時間をかけてどうやって襲うか戦略を立てます。そして、一気に襲います。だから、住民の人はここ2,3日ヒョウをみかけて怖いから、どうにかしてほしいと連絡してきます。

 先ほどもいいましたが、ヒョウはとても用心深いので、罠をしかけるとたいていその辺りから姿を消してしまいます。なので、罠を仕掛けるのは(今のところ)有効的。今のところというのは、ヒョウはとても適応能力が高いので、罠があっても近づかなければ何も起こらないとわかってしまったら、罠を怖がらなくなり効き目がなくなってしまうかもしれません。
都市部において、野生動物と人が居住地を共有しているようなエリアでは野生動物が人を怖がっていることが、重要なんです。わたしたち日本人みたいに野生動物がほとんどいない環境で育つと、動物と人が友達になるのが良い関係だと思いがちですが、そんなにうまくはいきません。お互い一定の距離を保つことがものすごく重要なのです。罠をしかけているところ。




 あいかわらず、ナイロビ国立公園の周辺は大規模な道路工事が進められていて、このままどうなってしまうんだろうというくらい、森が切られています。たとえ道路をつくったとしても、野生動物の棲みかを奪うのを最小限に抑えるような建設の仕方もあるのに、そういうことは考えていないようです。以前、ケニア野生生物公社に聞いたのですが、道路のプランニングに自分たちも関わっていて、どうすれば自然に優しいものができるか検討しているという回答をもらったのですが、どうやらそうはなっていないようです。。。


 この場所は、もともと森だったとこで、右側に見える木のように、大きな木がずっと続いているところでした。ヒョウもこの森が好きだったので、本当に辛いことです。この先どうなってしまうんだろうか。不安ばかりがつのります。

2013年5月31日金曜日

動物たちの共生

 人と動物の共生について考えていると、わたしたちはついつい動物をすべてひとかたまりとして考えがちだということに気づきます。

 どういうことかというと、たとえばサイとライオンは別々の種で、それが同じ場所に住んでいるということは、共生あるいは住み分けをしているということ。たしかに食べるものが違うので、競争することもあまりないのですが。

 ライオンとシマウマを見ていると食べられる側と食べる側に分かれているように見えますが、ライオンもお腹がすいていないと、シマウマが近くにいても見向きもしないです。こういうところが欲深い人間とは違うような気がするのです。

 

 
 バッファロの顔にとまっているのは、オックスペッカー。体につくダニなどを掃除してくれます。オックスペッカーにとったら餌になるダニがいっぱいついているので好都合ですが、バッファロにとったら、不快な虫ですから、食べてもらえればうれしいばかりです。

 異種の動物がどうやって一緒にいるか、注目してみているとおもしろいです。

1.たくさんのシマウマにまぎれて、1~2頭のはぐれヌー
2.昼間、木陰で休むバッファロとサイ
3.グラントガゼルの小さい群れについていく、1頭のインパラ
4.たくさんのインパラについてく、1頭のハートビースト
5.バブーンの群れとともに移動する、ブッシュバック

などなど、いろんな組み合わせが。

 このあいだは、サイとキリンが鉢合わせするところをみましたが、まるで、人が人とすれ違う時に、無意識にふっとみちを譲り合うように、すれ違って行きました。キリンはちょっと怖がっていましたが。。。

 以前こんなことがありました。
国立公園職員の宿舎は、たいてい公園内のゲートの近くにあるのですが、ある日、4歳から6歳くらいの5人の子供たち(ケニア人)が、公園の中に散歩に入ってしまいました。たぶん冒険心から歩き始めたのだと思います。公園の中にはライオンやバッファロ、サイなどが生息しています。親たちは「子供がいなくなってしまった」「ライオンに食べられてしまったんではないか」など大騒ぎをして探したところ、1キロほど離れた違うゲートで保護されていました。みんな無事。話を聞いてみると、途中でバッファロの群れにあったり、とても楽しかったそうです。
 
 バッファロはすごく近くにいたそうですが、何もされなかったそうです。というのも、子供たちはバッファロに対して警戒心がなかったし、ましてや攻撃してやろうという気持ちが全くなかったので、バッファロも子供たちを襲うという気持ちにならなかったんだと思います。確かに、バッファロが他の草食動物やバブーンなどを襲っているところをみることはほとんどないです。

 野生動物たちは人間が危険であることを知っているがために、人間を襲ってくる。人間は孤立した動物だということがわかります。なんか悲しいです。

 
 動物たちの他者に対する意識、興味深いです。

2013年5月24日金曜日

国立公園で。。。

 今日もいつものように国立公園に仕事に行っていたのですが、考えさせられることに遭遇しました。

 わたしが車をゆっくり走らせながら、アンテナを使ってヒョウを探しているときに、3匹のウズラのような鳥が道路を走って渡ってきました。もしかしたらわたしの車に驚いて草むらから飛び出して来たのかなと思い、びっくりさせて悪かったなと思っていました。ウズラが落ち着いて草むらに入るまで車を停めて待っていようと思いウズラを見守っていたのですが、後ろからクラクションを鳴らされ、後ろに車がいることに気が付きました。車2台が通るには少し狭い道です。だいたいからして、国立公園内でクラクションをならすことは禁止されているのです。

 わたしは、後ろの車に、「鳥がいるからちょっと待ってくれ」とたのみました。でも、後ろの車は聞きいれてくれず、へらへら笑いながら、ずかずか草むらに入って、わたしを追い越そうとしました。ウズラはさらに驚いて、とび跳ねながら草むらへ。本当に頭にきてしまいました。

 久しぶりに本当に頭にきてしまったので、「動物の邪魔をするなら、公園にくるな!」と叫んでしまいました。。。



 そして、ふっと思ったんです。国立公園や動物保護区って誰のためにあるんだろう。もちろん野生動物たちは国立公園や保護区の中だけに住んでいるわけではないけれど、外にいれば人に危害を加えられる危険もあるし、保護区内が唯一安全な環境を提供できる場所と思っていたけれど、実はそんなことはないんだなと。もしかしたら、国立公園や保護区は動物を見たい人たちが、他の場所より簡単に動物が見れるから、レクレーションのために来る場所であって、動物のための場所ではないのかもしれない。

 それを考えたら、やっぱり人間の傲慢さにさらに腹が立ってきた。地球は人間だけのものじゃないのに、もう、ほぼ人間のものになっている。

 今回のウズラの話ではないけれど、国立公園内でも動物を見に来た観光客のせいで、親と別れて迷子になってしまう動物たちも、かなりの数います。特に、ライオンやチーターなどは、親からはぐれてしまったら1頭では生きていけないので、迷子になることは直に生死にかかわる大問題なのです。ナイロビにある動物孤児院にも、よく親とはぐれて迷子になった動物が引き取られてきます。
野生動物たちは人間においやられて細々と生活しているのに、さらに国立公園や保護区の中でも安堵できないなんて、本当に大変です。昨年は、公園の中に産み落とされたダチョウの卵を、陰ながら観察していたのですが、3日目に盗まれてしまいました。近くに車の轍があり、他の野生動物に食べられたのではなく、人間に盗まれたとわかりました。


 せめて国立公園や保護区の中だけでもマナーを守って欲しものです。



2013年5月23日木曜日

またまたサイが

 先週、ナイロビ国立公園でまたまたクロサイが死んだそうです。。。
今回は歳をとった個体で、年齢のせいで死んだのではないかと言われています。

ナイロビ国立公園には約60頭のクロサイがいます。
そしてシロサイが約20頭います。

ナイロビ国立公園は都市に近く、面積も117平方キロメートルと小規模なので、
管理がしやすい、密猟者から護りやすいということで、
ケニアの各地からサイが連れて来られています。
シロサイはすべて他の場所から連れてこられたものです。
クロサイは、ちょっと内訳まではわからないのですが、
もともとナイロビ国立公園に住んでいた個体と、
他から連れてこられたもの。そして、新しくナイロビ国立公園で生まれたものがいます。

今回、死んでしまったクロサイはもともとナイロビ国立公園に住んでいた個体だそうです。

ナイロビ国立公園では、サイに関しては毎年、頭数を数え、耳を切って個体識別をしています。
他から連れて来られたものは、連れてこられるときに目印がつけられているのでわかります。
なので、ナイロビ国立公園で生まれた若い個体が対象になります。

24時間体制で、管理しているので、近年は密猟者に殺されたという報告はありません。


 4月の終わりに、モザンビークのサイが絶滅したというニュースもありました。
やはり、密猟が原因だそうです。最後に15頭残っていたサイを、
野生動物保護区内で管理していたにもかかわらず、すべていなくなってしまったそうです。

ナイロビ国立公園のサイ、ぜひ生き残って欲しいです。


2013年5月7日火曜日

町の中のヒョウ

ナイロビの町にはヒョウがいるんです。

4月18日、市民から通報がありました。
「夜、近所でヒョウを見かけた人がいる。」
「夜中に、うちの屋根を歩いてた」

現場に行ってみると、家の敷地の中にヤギを飼っているお宅でした。
ヒョウはそのにおいをかぎ分けてやってきたのでしょう。


写真の中央、木の扉になっているところが、夜、ヤギとヒツジを閉まっている場所です。
雨の時期になると、野生動物の獲物を捕るのが難しくなってしまうため、
家畜被害が増えてしまいます。

どうして雨期になると野生動物を捕るのが難しくなってしまうかというと、
第1に、雨が降ると、一面緑の草が茂ります。草食動物たちは草食べ放題の状態になるので、
あちこちに散らばってしまうのです。
第2に、野生動物たちも、たいていの動物が水にぬれるのが好きではありません。
だから、雨上がりのぬれた草の中を、餌を探して歩き回るのが嫌なのです。
そこで、手っ取り早く家畜を襲おうと思うわけです。
なので、雨期は、家畜の被害件数が増加します。



わなを設置しに行くと、たくさんの人たちが見に来ました。
でも、何度もいいますが、ヒョウは人目につきにくい動物なので、
見たことある人は、ほとんどいません。
でも、多くの人は怖がっています。「小さい子供がいるから、襲われないか心配だ」
「うちのヤギが食べられないようにするには、どうすればいい?」
など、多くの質問が寄せられます。

質問に答えて、少しでもみんなの不安を解消するのも、
わたしの仕事だと思っています。

野生動物と人が、お互いを干渉し合わない、適当な距離を保つことが重要です。



住民のみなさんの協力を得て、箱罠を設置したところです。

人と野生動物の共存、難しいけれど、
せっかく大都市ナイロビに貴重な資源が残っているので、
それを誇りに思って、大切にしていければいいと思います。